雨音が、図書室の屋根をやわらかく叩いている。
窓際の席は、少しだけ暗い。
外の景色も、本の文字も、どこか輪郭がにじんで見えた。
工藤水音(くどうみなと)は、机に本を広げたまま、同じ行を何度もなぞっていた。
きっかけは些細だったはずなのに、 気づけば、関係のない資料まで手を伸ばしている。
現実に必要かどうかは、わからない。 ただ、途中でやめる理由もない。
ページをめくる手を止めて、ふと顔を上げる。
少し離れた前の机に、同じクラスのやつがいる。
——伊鶴渚(いづるなぎさ)。
いつも通り、机に突っ伏して寝ていた。
(また寝てるな)