ぼくは、あたたかい水のなかにいました。
だれかの手が、ぼくをそっとなでてくれていて、
そのたびに、水がやさしく揺れて、光がきらりと踊ります。
水の音といっしょに、小さな声がしました。
たぶん「きもちいいね」とか、そんなこと。
ぜんぶはわからないけれど、
それが“やさしい”ってことだけは、ちゃんと伝わってきました。
そのときです。
ひさしぶりに、空のどこかから、声がしました。
「ふわりえる〜、聞こえるかい?」